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チャーリー

#6【取材】「Xジェンダー」という生き方(前編)

※この記事は、2018年に「Xジェンダー当事者から見た Xジェンダーの捉え方 並びに現代(日本)社会に対する意識の例」として当事者に取材をし、東京外国語大学開講講義「社会調査法」にて発表したルポルタージュを、加筆修正したものです。


 

 パスポートも保険証も性別欄は「男/女」。性別二元論が根強い現代日本。

しかし、実際は「自分は男性にも女性にも当てはまらない」と自認して生活している人がいる。あるいは「男性でもあり女性でもある」、はたまた「いつか男性または女性として生活するだろうが、今はそうではない」という人がいる。


 「Xジェンダー」という単語を聞いたことがあるだろうか。


 昨今メディアではセクシャルマイノリティに焦点が当てられつつあるものの、LGBT以外のセクシャルマイノリティはなかなか取り上げられているところを見かけない。ほんとうはアセクシャルだとかパンセクシャルだとか、様々な性質をもつ人間が存在しているのだが……。


 今回は、「Xジェンダー」の当事者に話を伺った。インタビュー内容は一般化せず、あくまでも一例として読んでいただけると幸いである。


 

1.先行研究などのまとめ


 解剖学上の性と性自認が一致しない者への学校現場での対応自体はかなり前から行われている。2006年5月18日の神戸新聞には「『心の性』優先 教員ら対応手探り」という題でMtFの児童が女児として通学することが認められた記載があり、これ以降も全国で性同一性障害の児童生徒に対応する例がある。また、同性愛についても、2002年の教科書検定で同性カップルを新たな家族形態のひとつとして容認したことで、家庭科の教科書に同性のカップルを家族とみなす記述が10点にも上った。学術でも「クィア」という分類で歴史などが研究されており、例えば河口和也氏は『クィア・スタディーズ』(岩波書店2003)の中で、ドイツでの同性愛の「犯罪化」と「病理化」の時代、アメリカでのゲイ解放運動とそれに続くレズビアンの運動の時代、「ホモフォビア」「ヘテロセクシズム」両概念の台頭、「クイア」という単語の意味内容や用法、さらに家族観について触れ、全体を通して同性愛者が「個人」として認められていく過程を追っている。また、佐々木掌子氏は『トランスジェンダーの心理学』(晃洋書房2017)で性同一性障害当事者の性同一について、「自己一貫的」「他者一致的」「展望的」「社会現実的」という観点から分析を行い、性的指向に関しても幅広く分析しつつ、Xジェンダーについても調査しており、「過渡型」「揺曳型」「積極型」の3つに分類している。さらに、LabelX編著『Xジェンダーって何?』(緑風出版2017年)ではジェンダー規範や性差別に対するトランスジェンダー当事者とXジェンダー当事者の認識の差など、特徴の違いを詳細に記述し、Xジェンダーに対する様々な見方を紹介している。

 このように長期にわたってセクシャルマイノリティに対する肯定的・分析的なアプローチがなされてきたが、実態としてはまだまだ周囲の認識と当事者の意識との差が大きいと言えそうだ。2014年2月8日の西日本新聞では「当事者アンケートが1月、九州・沖縄在住者を対象に初めて実施された結果、半数以上が自分のセクシュアリティーによってつらい思いを味わい、6割は相談相手がいなかったと回答。教育現場における支援の重要性が浮かび上がった。」と取り上げられ、また、文部科学省も性同一性障害の児童生徒に対する支援については方針を明示するものの、例えば「男女どちらにもあてはまらない性自認」を持つ者は今のところ支援の対象としていない。また、共学校の中でも男女で別の教育がなされ、実際の生活では性別二元論に基づいた対応が求められる。


2.問い


 当事者にインタビューするにあたって、以下のような質問を用意した。


・性自認を教えてください

・いつ頃からそう思っているか

・なぜ自分のことをXジェンダーだと思うのか ―①

・自分にとってのXジェンダーとは ―②

・周囲にはカミングアウトしているか

・社会や周囲に望むこと

・呼び名、人称代名詞、服装について

★自分をトランスジェンダー、または解剖学上の性と反対の性だ、と思っていた時期はあるか

★研究などにおいて、Xジェンダーについて様々な分類や見解が現れる中でその動きをどう見ているか

★最近の日本でのセクシャルマイノリティへの意識に対してどう思うか


無印の質問に関しては、LabelX編著『Xジェンダーって何?』(緑風出版2017年)の当事者インタビューに使われていた問を引用している。

質問①と②に関しては、当事者が自分のことを「Xジェンダーである」と認識している場合にのみ質問として成り立つ。よってこれらに関しては、インタビュー時に適宜表現を変えるなどした。

★印の質問に関しては関係の本などを読んでも解決しなかった独自の問である。


 

中編にてAさん、後編にてBさんのインタビューを掲載予定(掲載許可は得ていますが、都合により内容を変更する場合もあります)。


お楽しみに!🦋


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